M A R U

 

 

 

 

きれいな丸を描きたいんだ。

 

 

洗練されていて、

無駄のないしなやかな線、

 

大きくも小さくもなくて、

 

油断も隙もない美しいまる。

 

 

人生で一度でも良いから

描いてみたい。

 

 

仮にその丸を描くために

 

どれ程の

労力が、

鍛錬が、

努力が必要か、

 

そんなことすら

なにもわからないけど

 

その丸を描いてみたいんだ

 

これは、憧れに似てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

でもどうだろう、

 

 

 

「じゃあこれを使いなよ!」

 

 

と、

悩んでるわたしを見かねて

誰かがコンパスを渡してくれたなら

 

 

 

わたしはそれを

ありがたく受け取るのかな。

 

 

 

 

 

……たぶん、違うんだよなぁ。

 

 

 

 

コンパスを使って

いとも簡単に

誰にでも描けるような姿になった丸には

 

あんまり魅力を感じないんだ。

 

調教され尽くしてしまった個性みたいで。

 

 

 

同じまるなのにね。

 

 

 

 

 

そして結局、結論は

 

 

「丸なんていびつなままでいい。」

 

 

 

線の太さがバラバラで

どれだけ歪み狂っていようが

 

それだって

もう二度と描くことはできない、

唯一無二のまるなんだ。

 

 

 

 

そっちの方がいい、

それがいい。

 

 

 

 

 

 

 

一見、

対極にも見える

 

美しいまると、いびつなまる。

 

 

 

 

 

わたしはそのどちらにも

憧れを抱いてしまっているみたい。

 

 

 

 

どちらも両立させることなんてできないのに

 

そのどちらも再現してみたい。

 

 

 

 

矛盾しているね。

 

 

 

 

それに、

 

 

もしかしたら

ただの考えすぎなのかもしれない。

 

 

 

コンパスを使ったって

使う人によって

全く違うまるを描くはずなのだから。

 

 

 

 

 

 

こうしていつも

右往左往、

意識の中で揺らいでるんだ。

 

ひとつに決めるって

ほんとうにむずかしいよ。

 

 

 

 

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